第7話 「会社に頼らず、ファンに頼る」
水曜どうでしょうカメラ担当ディレクター・嬉野雅道と、SHARP公式の中の人・シャープさん。大阪で語り合った連載の第7話をお届けします。(聞き手:嬉野珈琲店、T木)
*前回のお話はこちら→第6話 「水曜どうでしょうVSコンプライアンス」
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T木:
シャープさんがやってることは広報だったり商品を売るということだと思うんですけど、それを感じさせない。
嬉野:
八百屋のお兄ちゃんみたいな立ち位置でやってますというところに共感しましたね。
シャープさん:
それはどうでしょう見て勉強しました。
嬉野:
ほら。
会場:
(笑)
T木:
どういうところでそう感じられますか?
シャープさん:
本当は頼りにすべきものはお客さんでしかなくて、会社の組織なんてなんの頼りにもならない。結局は外に助けを求めるしかないわけです。
嬉野:
そうだね。
シャープさん:
ピンチのとき、結局はファンの人をみつけて、しゃべりつづけて買ってもらうしかできない。こんだけみんなネットを見るとなると、テレビの広告は相対的に影響力が下がる。素の状態を見せて、それを好きって言ってくれてファンでいてくれる人を見つけていく。それで冷蔵庫壊れたら買ってもらうとか。そういう地道なことをやるしかないなっていう。
T木:
公式ツイッターがあることで、シャープのことを思う機会が増えたような気がしますよね。製品も機能を比べるんじゃなくて「あ、シャープさんが言ってた製品だ」とか。
嬉野:
そうだよね、シャープさんが話してたやつだから買おうって。だってどのメーカーの商品も機能的には近かったり、いまや、するのかな?
シャープさん:
どれも一緒です。
会場:
(笑)
シャープさん:
それは冗談ですけど、家電って買い替えですから。壊れるまえに「買え買え」って広告出しても買わないですよね。
T木:
テレビでテレビのCM見ても買わないですよね、いまみれてるのに。
シャープさん:
そうですよね。
T木:
ものを売るのに、あえて崩してゆるく表現したほうがいいって実感は元々お待ちだったんでしょうか。
シャープさん:
もともと広告やってて、ずっと「買え買え買え買え」って言ってたようなもんなんですけど、それに嫌気がさしたというか。
嬉野:
実体験があったわけだね。それに比べてやりたいことが見えて来たというか。
シャープさん:
テレビコマーシャルって数億円くらいかかるんですよね。結構会社ってほら、お金稼ぐ人より、使う人のほうが偉いというか。
T木:
はい、はい。
シャープさん:
僕やっぱり偉そうにしてたんですよ。お金使って。そんななか、会社の経営状況が悪くなってたくさんの人をリストラすることになった。なのに企業はやっぱり莫大な広告を垂れ流すわけです。多少の節約は意識すれど。「ああもう、これは俺の身の丈にあわないな」って。
嬉野:
ああー。
シャープさん:
だって数千人を路頭に迷わして、たくさんのお金を広告に投じるなんて狂ってるなって。じゃあもうネットにいこう、と。ネットもお金かかるんで、SNSにいこうって。
ツイッターやるのはタダなので、あとは工夫と手間暇で。
T木:
なるほど。親しみやすいシャープ「さん」という名前は勝手にみなさんが名前をつけられたんでしょうか?
シャープさん:
まあ一番決定的だったのは漫画ですね。
T木:
ああ、なるほど!どうでしょうも「どうでしょうさん」って呼ばれますね。
嬉野:
あれは大泉くんが言い出して。
T木:
企業とか番組に「さん」をつけるほど親しみが湧いてしまっているという。
(つづく)
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お読みいただきありがとうございました。明日は、シャープさんからの「会社をやめようと思ったことは…?」という質問に、嬉野さんが答えます。どうぞお楽しみに。
(明日の記事「テレビ局をやめようと思った日」に続きます)
《連載目次》
第1話(3月13日)
まずは前枠「ほんとうに初めまして。」
第2話(3月14日)
「行きがかり上、中の人やってます」
第3話(3月15日)
「宣伝しながら宣伝しない」
第4話(3月16日)
「『ありがとう』に泣かされる」
第5話(3月17日)
「炎上の火中、エモさで飛び込む」
第6話(3月18日)
「水曜どうでしょうVSコンプライアンス」
第7話(3月19日)
「会社に頼らず、ファンに頼る」
第8話(3月20日)
「テレビ局をやめようと思った日」
第9話(3月21日)
「前向きに、友達を減らそう」
第10話(3月22日)
「注釈は、堂々と言えば、文脈になる」
最終話(3月23日)
「幸せな働き方ってどんなものですか?」
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