第4話 「『ありがとう』に泣かされる」
水曜どうでしょうカメラ担当ディレクター・嬉野雅道と、SHARP公式の中の人・シャープさん。大阪で語り合った連載の第4話をお届けします。(聞き手:嬉野珈琲店、T木)
*前回のお話はこちら→第3話 「宣伝しながら宣伝しない」
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シャープさん:
いまではツイートにたいして反響がいろいろと。リプライも数多くいただいているので、クレームも多いんじゃないかってみなさん思われるんですけど。
嬉野:
はい、はい。
シャープさん:
実は一番多いリプライは「商品買いました」というツイートなんです。
T木:
ははあ。
シャープさん:
僕はみなさんの購入報告に「ありがとうございます」と返すのを大切にしてます。僕ら家電メーカーなんでテレビとか冷蔵庫とか作ってきたわけですけど、実際に売ってるのは家電屋さんなわけです。
嬉野:
そうですよね。
シャープさん:
買った人にお礼を言っていたのは、いままでメーカーじゃなかったわけです。けど、ツイッターがあることで直接お礼を言えるようになったんです。これが僕のツイッターを続けるモチベーションになっています。
T木:
なるほど!
嬉野:
私もね。
シャープさん:
はい。
嬉野:
似たようなことをよくやってました。どうでしょうのDVDが出る時に、買ってくれた人に「ありがとう」って掲示板で夜通しね。
T木:
24時を過ぎたらローソンさんでDVDを受け取れるようになるんですよね。
嬉野:
そうそう。2003年から2005年くらいまで徹夜でやってましたよ。DVD販売のお礼を掲示板で伝えようって思ったときに、最初は予約の時だけにしようかなと思ってたわけ。
T木:
受け取り時はしないつもりだった。
嬉野:
うん。そしたら藤村さんが「先生、受け取りの時もやったほうがいいよ」って。藤村さんは、ご自身ではなさらないんですよ。
会場:
(笑)
嬉野:
けどやってよかったです。掲示板でのユーザー名は、「@地名」というのを書いてくれと呼びかけてましたから、どこの人が買ってくれたのかわかるわけ。
T木:
はい、はい。
嬉野:
夜中にですよ、「ローソンに取りに行ったんですが、入荷していないと言われたので、自転車を押しながら帰っています」とかコメントがあるわけですよ。それで、購入できた人から「ありがとう」なんてコメントがくるんですよ。
シャープさん:
ああー。
嬉野:
「ありがとう」はこっちが言うセリフだろうと。そういうコメントが何件も何件も届くんです。
嬉野:
そうしてるうちに、朝3時ごろになって、朝の番組の連中が出社してくるわけですよ。そしたら嬉野さんが一人でね、パソコンの前にぽつんと座ってるわけだから、「おい、うれしーどうした?」って、出社組が声をかけてきそうになるの。オレ背中向けたまま「来るな」って思ってたね。「来るんじゃねえ」って。だってもう、泣いてますからね。
シャープさん:
ああー(うなずく)
嬉野:
おっさんが朝から一人で泣いちゃってるわけですから。声かけてほしくなかった。
会場:
(うなずく)
嬉野:
シャープさん、すごいうなずいてるから、同じようなところもあるんだろうね。
シャープさん:
そうですよねぇ…。「直接お礼を言う」って結構モチベーションになるんです。
嬉野:
本当にそう。買ってくれた人との関係が深まったんじゃないかと思ったよね。買ってくれた人も本当に喜んでくれてるんだけど、ひょっとしたらDVDを手にした本人もDVDで自分がこんなに喜ぶなんて思ってなかったかもしんない。ものの売り買いを通じて、自分がこんなに好きだったのか、というところに気づいていく。
シャープさん:
そうですね。
嬉野:
販売は、お金もうけなんだけど、コミュニケーションのツールでもある。
T木:
なるほど。
シャープさん:
ほんとうに……。そのほか、寄せられて来るコメントでは、「何買えばいいですか?」っていうのが多いです。
嬉野:
はー。「買いました」じゃなくて「何買えばいいか」。
シャープさん:
そうです。で、ぼくも一応家電の目利きなんで、どの製品が適切かすぐ返すんですよ。
T木:
一応…(笑)
シャープさん:
はい(笑)
嬉野:
一応ね。
シャープさん:
部屋の広さとかの条件から、どのサイズの製品がいいかとかですね。ただ、そのうち大喜利みたいになってくるんですよ。
嬉野:
なんでさ!(笑) なんで大喜利みたいになってくるわけ?
T木:
(ツイートを見ながら)「予算がない場合はどの掃除機を買ったらいいのでしょう?」
T木:
「ほうき」…!
嬉野:
面白いね。シャープという家電メーカーがほうきを勧めちゃう。
シャープさん:
あとツイートの特徴として、会社のアカウントどうしでおしゃべりしたりしてます。
会場:
(うなずく)
シャープさん:
タニタさんとか。旅行いこうってリプライでやりとりして。「タニタ式どうでしょう」なんて名付けて。
(※この対談は2017年に行われたイベントを記事化したものですが、その後の2018年、「タニタ式どうでしょうin北海道」班のみなさんがHTBを訪問されました)
嬉野:
HTBのアカウントがいいねしてるじゃんか。これ、広報のあいつじゃねえかな。
T木:
(笑)
シャープさん:
HTBさんご本家に、こうやってリアクションしてもらえるっていう。どういうことなんだっていう面白みですよね。
嬉野:
あいつ、今日呼んでやればよかったかな。どれだけ狂喜したことか。
T木:
タニタさんもどうでしょうお好きで?
シャープさん:
ええ、好き好き。サイコロ持って来てたし。
会場:
(笑)
嬉野:
これでうちは安泰だ。
T木:
影響力ありますから。
嬉野:
でも実際に旅行を実現しちゃうのがすごいね。ツイッターでの掛け合いを通り越えて、本当に行っちゃってるというのがバカバカしくて素晴らしいよ。
T木:
ツイッターとかインターネットを超えてる。
嬉野:
もはや企業でもなんでもない。個人が行ってるってだけなんだけど、面白いよねぇ。
シャープさん:
みんなツイッターやりながらなんで、旅行中は黙ってましたけどね。
T木:
(笑)
シャープさん:
あと視点が違うところでいうと、自分ところの広告を、あえてちゃかすというか。
嬉野:
こういうの大事ですよ。わりとバカにしていくという。自分のところを。
会場:
(笑)
シャープさん:
広告って偉そうにいうじゃないですか。ぼくそれがあんまり好きじゃないんですよ。
嬉野:
あんた広告の専門家でしょ!
シャープさん:
そうなんですが…。いつかAIに取って変わられたいと思ってまして。実際にツイートを女子高生AIに代わってもらって。マイクロソフトの。
嬉野:
ほほー。
シャープさん:
AIのツイートは自動で返信するから、人間よりもリプライが早くてバレるんです。だから、ちょっと遅くしたらもうバレないんじゃないかなと。それで僕もいろいろ希望を持てて。
嬉野:
面白いねえ。ツイートずっと見てられる。
T木:
フォロワーさんもみんなそうなんでしょうね。
(つづく)
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お読みいただきありがとうございました。明日は、シャープさんと嬉野さんが、「炎上」についてそれぞれの経験を語ります。シャープさんが「一番しんどかった」と語る、あの時のこと。「炎上したら黙る」がセオリーとされる中、どうしても伝えたかった思いとは?どうぞお楽しみに!
(明日の記事「炎上の火中、エモさで飛び込む」に続きます)
《連載目次》
第1話(3月13日)
まずは前枠「ほんとうに初めまして。」
第2話(3月14日)
「行きがかり上、中の人やってます」
第3話(3月15日)
「宣伝しながら宣伝しない」
第4話(3月16日)
「『ありがとう』に泣かされる」
第5話(3月17日)
「炎上の火中、エモさで飛び込む」
第6話(3月18日)
「水曜どうでしょうVSコンプライアンス」
第7話(3月19日)
「会社に頼らず、ファンに頼る」
第8話(3月20日)
「テレビ局をやめようと思った日」
第9話(3月21日)
「前向きに、友達を減らそう」
第10話(3月22日)
「注釈は、堂々と言えば、文脈になる」
最終話(3月23日)
「幸せな働き方ってどんなものですか?」
◎嬉野雅道の初エッセイ「ひらあやまり」ついに文庫化!ついに実現した、シャープさんの解説文。
シャープさんの解説文も読めるお得すぎる文庫本は、3月23日発売です!
対談イベントの直後から、「今度本を出すときはシャープさんに帯を書いてもらおう」と決めていた嬉野さん。今回の文庫化で実現し、解説文も書いていただいたのでした。
表紙はアニメ「進撃の巨人」を手がける浅野恭司さんの書き下ろし。
Amazonにて、絶賛ご予約受付中!どうぞよろしくお願いします。
◎水曜どうでしょうディレクター藤村忠寿・嬉野雅道と人生を旅するマガジン 『Wednesday Style』創刊!
水曜どうでしょうディレクター(D陣)藤村忠寿と嬉野雅道が、毎月多彩なゲストを編集長にむかえてお届けする月額マガジン「Wednesday style」。3月のゲスト編集長は、ライター・カツセマサヒコさんです。テーマはあえて直球の、「テレビとインターネット」。購読受付中です!
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