第11話

最終話「幸せな働き方ってどんなものですか?」

水曜どうでしょうカメラ担当ディレクター・嬉野雅道と、SHARP公式の中の人・シャープさん。大阪で語り合った連載の最終話をお届けします。(聞き手:嬉野珈琲店、T木)
*前回のお話はこちら→第10話「注釈は、堂々と言えば、文脈になる」
*嬉野雅道著、解説・シャープさん。文庫版「ひらあやまり本日3/23発売です!
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T木:
「幸せな働き方とはどういうことだと思いますか」

嬉野:
それは聞きたいね。

会場:
(笑)

T木:

嬉野さんへの質問です。

嬉野:
そうですか(笑) いま幸せなんですけどね。だってこうなろうと思ってここに来てないもんね。期せずしてここにきている。

シャープさん:
はい、はい。

嬉野:
ここにくるまでに、やりたくないこととか知られたくないことを、ちゃんと出して来たと思ってて。自分の中のそういうものを出すと笑ってくれるような「商品」に変換して出してきたかなと。だからいま、テレビ番組を作ってくれっていわれるのが、いちばん負担なんだもん。

会場:
(笑)

嬉野:
っていうと笑いが起きるでしょ。ということはもう俺は負担なことしなくていいわけ。お客さんが「それはもう嬉野さん負担ですよね」って受け取ってくれるから、ぼくは「そうです」って。

T木:
なるほど。

嬉野:
やれそうなことは必死でやったほうがいいですよ。必死になるという機会には普通は恵まれないものだと思う。それは、やれるかもしれないという予感がある時にしか人間は必死になれないから。やれないものは、そもそも必死になれないわけですよ。もし上からやれないことをやれって言われると、それは負担なだけで必死にはなれない。

T木:
やれることは必死になれる。

嬉野:
不安で、初めてで、失敗するかもしれない。だけどなんか頑張ればやれそうな予感がするからやってみようって。そうなったら、もう、すぐ本番だからやるしかない。そういうことの連続で人生がこっちの風に膨らんで来たかなとは思う。

シャープさん:
おおー。

嬉野:
やれないことはやれないといったほうがいい
だろう、と。番組を作る、映画を作る、そういうときに結果的にお客さんに「面白いね」と言われるものができればいいわけ。

T木:
あくまで結果的に。

嬉野:
その過程でオレがどういう役割を果たしたのかを考え直したときに、「そんなに大したことしてないですね」となったとしても、そういうお気楽な精神状態の人間がいることが制作チーム全体にいい影響を与えるだろうと思えば、そういう自分で居ていいわけでしょ。「あれもそれもこれもオレがやったんです」って言うためにそこにいるわけじゃないから。

T木:
良いものをつくるために、そこにいる。

嬉野:
そうそう。「結果的に良いものができてよかったね」ということしかお客さんからの景色にはないじゃないですか。

シャープさん:
うんうん。

嬉野:
私はドラマの現場も好きだけど、プロデューサーとか監督とかいう役職は私には負担でしかないわけ。だからもう、「何にもしないけど現場にはいるから」みたいな。「でも違うと思ったら言うから」っていう一番厄介なやつになった(笑)

会場:
(笑)

嬉野:
でもそうしたほうが、このドラマの最終結果にとっていいだろうと思うからそうするわけで。それは、藤やんとかキャップが「いいよ」って言ってくれないと、そんな風にはできない。

T木:
そうですね。

嬉野:
「いいよ」って言ってくれるということは、藤やんもキャップもそのほうに分があると思ったから言ってくれてるんだと思う。だから「自分になにができるのか」っていうところで生きていくことでいいんだよ、きっと。それが言えるようになったからハッピーなわけ。サボりじゃない。本当にそうなんです。

T木:
そのあたり、シャープさんは現状どうですか。

シャープさん:
ぼくは……そんなに……幸せかどうかはわかんないですけど。

嬉野:
うん。 うん。

シャープさん:
日本のインターネットって、人生しんどいっていう気分に覆われてます
から。ツイッターは、シャープの状況があったからこそ余計に共感されたというのもあると思うんです。だから「なんだかなあ」とか思いながら、世間と歩調を合わせていくことを考えると、ぼくは幸せにならなくてもいいんじゃないかなあと。

嬉野:
それはあると思う。我々が会社をやめようと思った時も、会社をやめたらすっきりするだろうなと思ったけど、すっきりしたら共感を得られないじゃないかとも思った。会社のなかでいろいろと悶々としているほうがみんなと共感できるというか。「ですよね」という感覚。これがなくなると商売、つまりはコミュニケーションができなくなるかもと思ったね。

T木:
ありがとうございます。つづいての質問「お互いの活動のなかで、目の付け所がシャープだなと思うところはありますか」とのことです。

嬉野:
炎上したときの返しなんてもんは目の付け所がシャープでしたね。ぼくも掲示板でね、やっぱり削除して次にいくっていうことはしなかったから。批判的なことを書いていらっしゃる人がいて消したりスルーしたりすると、消された人は覚えてるよね。

T木:
そうですよね。

嬉野:
いい言葉だけで予定調和でやってるだけなんだって思われるよね。だから否定的な言葉も消さずに、返事を書いていた。 

T木:
共感されてましたね。

嬉野:
同じようなことあるなー、と。シャープだな、と思いましたね。 

シャープさん:
ぼくは、嬉野さんの本ひらあやまりで、池に鯉と亀がいて、鯉が主役のように思えるんだけど、亀がいることにもどれだけ意味があるかっていう話(※第7段「池の鯉、池のカメ」)があって。ここが、一見めちゃくちゃ読みにくい文章なんですけど…。

嬉野:
そうですか(笑)

シャープさん:
すごい好きです。あれは本当に心が震えました。

T木:
共感を生む出会いになってほんとうに、ホッとしました。本日はありがとうございました。
 
嬉野:
ありがとうございました。

シャープさん:
ありがとうございました。

会場:
(拍手)

最終回・おわり

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お読みいただきありがとうございました。
連載はいかがでしたか?
嬉野さんとシャープさんのお話が、これからもたくさんの方に届くよう願っております。

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(今後のゲスト編集長:SHARP公式さん病理医ヤンデルさんたらればさん

「ひらあやまり」文庫化記念!
《どうでしょうさんとシャープさん」連載目次》

第1話(3月13日)
まずは前枠「ほんとうに初めまして。」
第2話(3月14日)
「行きがかり上、中の人やってます」
第3話(3月15日)
「宣伝しながら宣伝しない」
第4話(3月16日)
「『ありがとう』に泣かされる」
第5話(3月17日)
「炎上の火中、エモさで飛び込む」
第6話(3月18日)
「水曜どうでしょうVSコンプライアンス」
第7話(3月19日)
「会社に頼らず、ファンに頼る」
第8話(3月20日)
「テレビ局をやめようと思った日」
第9話(3月21日)
「前向きに、友達を減らそう」
第10話(3月22日)
「注釈は、堂々と言えば、文脈になる」
最終話(3月23日)
「幸せな働き方ってどんなものですか?」